本棚に眠っていたのを抜き取ってあたらしく知る私は今日だ
降るような歌声に身を震わせて私は一筋の糸になる
平等に思い出になってゆく彼ら私は標本作りをやめたい
頬を撫でしずかに街を渡る風あなたもきっと知っているだろう
みずうみをつくろうとして青色の絵の具とくとき凍る指先
のほほんととぼけかましていきましょうナンセンスビューティフォーライフを
ベランダで私の白さを磨く朝ちらつく雪と老人ホーム
音のなか揺られていよう浅いとか深いとかもういいではないか
立ち読みで済ませて帰る冬の午後屋根に佇むカラスが青い
吐き出した声の残響汚くて確かに傷つけたことを知る