ただ在る
思いつきで生きると決めてから、随分と気楽になった。
朝起きて、今日の空気を吸いこむ。
腕をいっぱいに伸ばして、
体と共に生きていることを思い出す。
お湯を沸かす。
チチチ、というガスの点火の音。
湯気を見つめる。
家族の会話も、かろやかなリズムとして
耳の中を転がってゆく。
今しか味わえない言葉たち。
今。
生きているのは今なんだ、と思う。
手元ばかり見ていたら苦しくなって、
いつも冷たい目をしていた。
生きることがわからなかった。
だけど今ならわかる。
私は、世界にただ在るだけでよいのだと。
詩を書くために生きるのではなく、
生きるために詩を書く。
それはとてもささやかで、ありふれていて、だけどとても愛おしいもの。
ただ息をしていよう。
私はここにいると、私が知ってゆこう。
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